栗山節郎先生/日本鋼管病院 副院長・医師
スポーツ医学は、競技選手のみならず
一般の患者に対しても実践できる重要な知識です。
もともと昭和大学医学部整形外科医局の後輩であった小関博久理事長が、スポーツ医学が重要であることを認識され、「オリンピックやスポーツ医学の経験を直接学生に話してほしい。」との希望から、「スポーツ医学」という特別講義を開始しました。スポーツ医学は、1つは「競技選手の医学」、つまり競技選手が怪我したら治療し積極的にリハビリして早期的に競技復帰、さらにその知識を利用し、選手の安全な強化に生かします。現代では、心拍数や血中乳酸を測定しながらトレーニングし、科学的にコントロールしながら強化することが全ての種目で常識になっています。
さらにスポーツ医学の知識を一般の人々に応用すると、安全で健康な人生を送る指導ができます。現在の医療で最も多いメタボリックシンドローム、ロコモティブシンドロームを基にした疾患群です。メタボリックシンドロームは、「高カロリーの食事、運動不足」が原因で、残ったエネルギーが脂質として蓄積されるものです。1,000年ほど前は一般人の大半は1日2食しか食べられず、1日3食を食べることができませんでした。このため動物としてのヒトは、インシュリンをつかってエネルギーを蓄積していました。ところが現代では食べ過ぎてしまうことが多いことから、脂質はコレステロールや中性脂肪として体内に蓄積されます。これが続くと、動脈硬化、高血圧、さらには「脳梗塞」、「心筋梗塞」になります。この2疾患と「ガン」が日本人の3大死因です。つまり、食事の管理と運動の管理がこの2大疾患の予防と管理として重要になります。メタボリックシンドロームの予防としては、適切な栄養食、エアロビック運動(心拍数を元にして運動量を計算する方法)で、心拍数を計りながらエアロバイクやトレッドミルで適切な目標心拍数を管理し指導することが重要です。
整形外科として大切なものはロコモティブシンドロームです。老化すると筋量や骨量が減少し、骨粗鬆症になります。徐々に積極的な運動が出来なくなり、さらに骨粗鬆症が進行すると、腰痛や骨折を生じ、だんだん活動ができなくなります。従来は脳梗塞による「寝たきり」が原因の1位でありましたが、今では骨粗鬆症に伴う痛みや骨折での「寝たきり」が1位となっています。医学としても骨粗鬆症にならないように、適切な食事と運動を指導することが大切になります。このため、理学療法士が適切な運動指導を予防と治療として行うべく、「スポーツ医学の知識」が知識が必要となります。実践的なスポーツ医学としては、選手の怪我をより早く治療して、より早く競技復帰することでありますが、多くの一般の人を対象とすると、ロコモティブシンドロームやメタボリックシンドロームの知識が必要となります。当校の卒業生にも仕事をしながら、ナショナルチームやプロのトレーナーをやっている理学療法士もいますが、多くの卒業生はスポーツ医学を用いて、一般の患者へ適切な運動指導を実践しています。東都リハビリテーション学院で理学療法に関わる知識とともに実践的なスポーツ医学も勉強して、社会に役立つ理学療法士を目指して下さい。
Profile
日本鋼管病院 副院長・整形外科統括部長、昭和大学 医学部 客員教授
資格
日本整形外科学会 専門医・指導医、日本整形外科学会 リウマチ認定医、日本リハビリテーション医学会専門医・指導医、日本東洋医学会 認定医、日本整形外科スポーツ医学会 評議員、日本臨床スポーツ医学会 評議員、厚生労働省 補装具適合判定医、日本体育協会 認定スポーツドクター、介護支援専門員
オリンピックドクター帯同歴
1988年 カルガリー五輪、1992年 アルベールビル五輪、1994年 リレハンメル五輪、1998年 長野五輪、2002年 ソルトレイクシティ五輪 冬季オリンピック 日本スキーチームドクター